何がシステム導入を失敗させるのか

「マスタスケジュールの変更決まりました?」
「いやあ、まだお客さん決めてくれないんだよね・・」
「じゃあ、1年延期ですかねえ」
こんな会話が1ヶ月ぐらい続いている。状況は1ヶ月間変わっていないのだ。この後は遅延はどちらに責任があるのかを押し付け合い、目標を失ったメンバーは疲弊し、抜けていった人たちが作ったバグだらけのプログラムを抱えて呆然とする。こんなプロジェクト、星の数ほど存在している。


今まで2年近い期間をかけたプロジェクトを2つ経験してきた。1つはある程度の成果を収め、1つはまさに今、成果なく終わろうとしている。双方に共通の問題はスケジュールがないということだった。プロジェクト管理の本を読めば、タスク、リソース、進捗、コストを見るためにスケジュールの重要性を必ず説いている。致命的であるはずのスケジュールの有無に関係なく、2つのプロジェクトの結果は違った。その原因は何だろうか。
経験上感じた1つの大きな違いを紹介したい。


原因は情報システム部の能力だ。
成功例はユーザーが主体となって運営していた。現場からのボトムアップ的な視点を踏まえ、情報システム部が全体像を描く。導入担当も現場経験者ばかりの情報システム部のメンバー+SEという布陣で新規技術部分の不足を補っている。移行についても現行システムを知り尽くした情報システム部のメンバーが常に頭に描いている。
失敗例は無能なSIer主体であり、情報システム部が何も出来ない。会議の調整を行う以外は現行システムに関する全体からすると小さな問題を指摘するぐらいしかできない。ひどい場合はブラックボックスと化したシステムが存在し、移行の方法も思い浮かばない。当然、最終的なシステムの姿も描けない。


意思決定者がいるかいないかも大きな違いだ。成功例では強力な意思決定者が情報システム部トップに君臨し、良かれ悪かれすばやく判断を下した。プロジェクトの延期もあっという間に決め、経営陣の了解を取れるほど力があった。
失敗例は意思決定者は経営トップしかおらず、報告を嫌がる風潮があった。報告したら責任者になることが多いらしく、自分から言い出さない社風だ。報告はずるずると先送りされ、直前になって「どうなっているんだ!」と社長が怒鳴り込んでくる。これ以上怒らせないように顔色を伺いながら新しいシステム像やスケジュールを作成する。こんな繰返しだ。


無論SIerがいればよいが、そんな人材が揃った会社は日本には数えるほどしかないし、そのプロジェクトに揃うかどうかも分からない。しかも、どんな大きな会社に頼んでもプロジェクトリーダーに限ってはほとんどが外れだ。あくまでシステム屋であり過度な期待はよくない。
要は情報システム部の能力なのだ。現行システムをお守りするだけでなく、現場を理解し、将来像を描き、導入を進めることが出来る情報システム部こそが必要なのだ。受身の情報システム部ほど役立たないものはない。
これは経営者からの情報システム部に与えるミッションが重要であろう。経営企画とともに業務が出来る環境も必要だ。会社としてのシステムに対する考えが問われるのだろう。